慌ててサプリなどを買い込まないように

 海外の記事をそのまま紹介した情報が出回っているようだが、記事の基になった論文は問題探索型の簡易調査で、因果関係を証明したものではない。


Vitamin D Insufficiency is Prevalent in Severe COVID-19

https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.04.24.20075838v1


 ビタミンDとの絡みで言えば、

①バランスの取れた食生活だから

②免疫機能が保たれていて

③重症化を免れる

という因果経路と

①バランスの取れた食生活だから

④血中ビタミンD濃度が高い

という因果経路がそれぞれ存在していて、③と④の間に擬似相関が観測される可能性が高い。


更に、

⑤屋外でよく運動するから

⑥体力があって(特に心肺機能)

⑦重症化を免れる

という因果経路と

⑤屋外でよく運動するから

⑧日光を浴びる時間が比較的長くて

⑨血中ビタミンD濃度が高い

という因果経路も存在していて、⑦と⑨の間に擬似相関が生じる可能性も、考慮に入れなければならない。


 重症患者の血液を調べただけでは、このような条件を考えてデータを補正することは出来ないので、信頼度もそれほど高くないと判断すべきだろう。


 欧米のメディアがビタミンDの話題に過剰に反応するのは、国民の間に魚を常食する習慣が乏しかったり、緯度や気象の関係で日照時間が短かったりするせいで、国情の違う日本人が一緒になって騒ぐ必要はない。慌ててビタミンDのサプリを買いに走ったりしないように。



付記

 記事やコメントで気になるものがあったので、ちょっと訂正を。

*普通の食生活では摂りにくいので、、、

→週に2~3回ぐらい魚を食べていれば、所要量は充分に上回っている。鮭、サンマ、ウナギ、身欠きニシンなどに特に豊富で、サバ、いわし、マグロ、カツオ辺りが次点といったところ。油溶性のビタミン(A、D、E、K)は、水溶性のビタミン(B群、C)とは違って比較的長い間体内にとどまっていてくれるので、毎日食べる必要はない。このコメントを見た時、サプリメント会社の回し者かと思ったが、どうやら、そうでもないらしい。

*キノコをたくさん食べよう。特にシイタケを。

→キノコ類のビタミンD含有量はさほど高くない。例外はキクラゲぐらい。食品成分表で確認すればすぐに気がつくだろうに、何故こんな連想が定着しているのだろう?