骨が弱くなるのを防ぐのに役立つチーズ?

 一応、対照群をとった介入研究なのだが、水分量の少ないハードタイプのチーズをやや多目に、水分量の多いソフトタイプのチーズをやや少な目に摂取させている時点で、もう違和感を覚える〈笑〉。医薬品と違って、食品は二重盲検が出来ないが、もう少し条件を揃える努力はしようよ。(⇩)

https://www.nibiohn.go.jp/eiken/linkdediet/news/FMPro%3F-db=NEWS.fp5&-Format=detail.htm&kibanID=78584&-lay=lay&-Find.html

 eurekalertの元記事はこちら(⇩)

http://eurekalert.org/news-releases/960329

(⇧)ヤールスバーグ・チーズはノルウェーのハードタイプ(セミハード)のチーズである。この研究は、ノルウェーの研究者がヤールスバーグ・チーズを製造している企業からも研究費用の援助を受けて行われたようだ。欧州ならばハードタイプのチーズは他にもいろいろあるだろうに、スッゴく「愛国的」だよな〈笑〉。

 プレスリリースが盛り気味なだけではなく、論文自体にも難がある。専門家たちのツッコミはこちら。(⇩)

https://www.sciencemediacentre.org/expert-reaction-to-study-looking-at-daily-jarlsberg-cheese-versus-camembert-and-measures-of-bone-thinning/

(⇧)実験で用いられている代理指標と実際の骨密度との因果関係が確固たるデータで裏付けられていないこと、ビタミンKと骨密度の間にも(相関関係は認められるが)因果関係は証明されていないこと、などの他に、摂取するチーズの量が異なること、ヤールスバーグ・チーズの製造者から資金援助を受けていることなども指摘されている。

 特に鋭いと思ったのが最初のコメンテーターの乳糖不耐症に関する指摘で、アジア系で特に多いこと、下痢によってミネラルの吸収が妨げられることに言及している。被験者は平均年齢33歳の女性だが、人種による体質の違いが考慮されているかどうかは怪しい。「チーズ」は国産にこだわるけど、「嫁」は輸入するからなあ〈笑〉。


 こちらでも紹介されていた。(⇩)

https://medical.jiji.com/news/53706

(⇧)『時事通信』はともかく、ネタ元の『medical tribune』はマトモなお医者さんが目を通すようなメディアなのだから、食品・栄養系の杜撰な論文をそのまま紹介するのはやめてほしい。