投資>投機という《価値観》を壊さないために

 主権国家であれば、このような制度を設計・実施するのは、当然のことだろうと思われるのだが、実際には、各方面からの干渉などもあって、なかなか難しいようだ。
 以下に引用するのは、リチャード・クー氏の名著『「追われる国」の経済学 ポスト・グローバリズムの処方箋』(’19 東洋経済新報社)の一節である。

「こうした苦い経験から、チリの人々が到達した結論は、不勉強な外国の銀行や投資家から安易に資金を受け入れるのは危険だということであった。投資対象国について無知な外国人投資家ほど、事態が急変すれば狼狽して、我先に逃げ出そうとする。その結果、その国の市場や経済は大混乱に陥ってしまうのである。
 そこでチリでは、外国の投資家に自国をじっくり勉強してもらうために、短期滞在の投資資金に対しては高い税率をかけ、投資期間が長くなるにつれて税率を徐々に引き下げていく方法を考案した。この税制によって安易にチリに出入りすることができなくなった海外投資家は、チリの勉強をせざるを得なくなり、そのことは同国経済の安定に大きく貢献したのである。しかしその後、その税制は米国の圧力によって廃止されてしまった。」