超・商品貨幣論?

 もう一年前の連載なので、消されているかと危惧したのだが、まだ残されているようだ。私が新興の貨幣論に対して決定的な違和感を抱くきっかけとなった論考がこれである。

https://hbol.jp/196715/2

「商品貨幣論に結びつけられた信用貨幣論の知見は極めて常識的なものです。すなわち、貨幣の価値は、銀行システムを媒介にして、市場で売買されている商品の価値にリンクされます。財政は、税を通じて市場で生み出された価値を集めて使うだけです。魔法を使う余地はどこにもありません。MMTが、物価という恣意的な留保をつけて、無制限ともいえる財政支出を容認してしまうのは、貨幣を論じるときに市場との関係をいったん切って、国の力という外部的な要因を持ち込んでしまうためです。財政を市場から遊離させる理論的な操作をしているようにもみえます。」

 難点を挙げるならば、財政を論じる際には、税収を裏付けとした「国債」というものに対する分析が必要不可欠であるにも関わらず、それを欠いた記述になっている点であろう。この場合、財政の自由度は、理論的に極めて低く想定されてしまい、そこで現実との乖離が生じることになる。

 しかし、貨幣の価値が「市場」「商品」「銀行システム」との関連によって生じるという観点を(あの時期に)示した功績は大であろうと思う。