国債は負債ではなく資産???

 最近、「国債は負債ではなく資産」なる誤解を招きかねない表現を目にして、私は心の中で大声で次のように叫んだ。「違うだろ、このハゲ~!」(©豊田真由子)。
 改めて説明する必要も無いが、国債は政府にとっては紛れもなく負債であり、民間にとっては資産である。同じ物でも立場が変われば性質が異なって当然だ。何が目的でこのようなおかしな言い方をするのだろうか?
 それはともかく、中央銀行にとっての国債は、どのように表現すべきだろうか?
 会計的には確かに資産ということになるのだろう。しかし、中央銀行は営利目的で運営されているわけではないので、民間企業における資産とは性質が異なることに留意する必要がある。正直なところ、私は、経済学者か会計学者に、民間企業と中央銀行とでは同じ形式の貸借対照表を使っていても、意味する所が違うということを、きちんと説明してほしいと願っているのだ。
 迷ったあげく思いついたのは「質草」という表現である。一般には中央銀行は「銀行の銀行」と説明されるのだが、同じ比喩的な表現なら「銀行の質屋」と呼んだ方が良いのではあるまいか?
 もっとも、質屋も営利目的で運営されているのだから、これも正確な比喩とは言い難い。とはいえ、現代画餅理論もとい現代貨幣理論とやらの悪影響で、政府が好きなだけカネを刷れると勘違いしている人がいる現状では、担保が無ければ刷れないということに思い至るような比喩を用いることも無駄ではないような気がするのである。