MS(マネーストック)は国庫に移動すると、定義上、MSにはカウントされない・・・らしい

 初めて知った(←遅いよ!)

 経歴を見る限り、日銀生え抜きの実務家と表現して差し支えない人物のようである。
 以下の記述は、国債の購入者が民間商業銀行であるか否かによってMSの総量が違ってくるという点についての解説として秀逸であるが、同時に、民間預金が国庫に引き上げられた場合、いったんMSのカウントから外れるという定義に基づいて中銀の実務が遂行されていることを強く示唆するものとして重要である。


「まず、この国債を個人・企業等非金融機関が引受ける場合は、最初に個人・企業から政府への資金移動が起こり、先の分析視点で見れば、財政の揚げ(=MS減)となる。しかし、やがてこれによって調達された資金が、国家目的に従って、公共事業費や社会保障・福祉などの名目で、支払われていく(財政散布、すなわちMS増)。したがってやや長目に見ればMS総量は不変。
 これに対し、この国債市中銀行が引受けた場合には、銀行の対政府信用創造が行われるわけで、その時点で財政揚げ(=MS減)とはならない。そして政府はこれによって調達したオカネを、目的に応じて民間向けに支出し、これが個人・企業の預金となって銀行に入ってくる(財政払い超)。この結果、通算すると、MS総量は市中銀行国債引受け分だけ増えることになる。これが個人・企業等非銀行による国債引受けのケースとの決定的な違い。」(2015・横山昭雄・『真説 経済・金融の仕組み ー 最近の政策論議、ここがオカシイ』・日本評論社)


 いわゆるMMTerは、MSを増加させることと、経済のフローの規模を増加させることを、故意に混同しているような気がしてならない。