非裁量的安定化制度とは言うものの、、、

 少し前に話題になったMMTとは〈もっと、もっと、タケモット〉の略だが(←いきなり嘘をつくなよ!)、この経済学説では、その政策的インプリケーションとして、景況の悪化や亢進に対しては、従来型の裁量的な景気刺激策や財政の引き締めよりも、非裁量的な安定化制度を重視しているらしい。具体的には累進税制やJGP(雇用保障制度)といったところだろうか?

 この姿勢自体は、原則的には正しい。

 しかし、である。

 わが国の例で言えば、70年代の狂乱物価も、80年代後半のバブル経済(及びその崩壊)も、現在よりかなり適切な累進税制のもとで起こっている。

 ここにJGPとやらをつけ加えたところで、どれほどの安定化効果が見込めるというのだろうか?

 私見では、具体例が挙げられている非裁量的安定化制度で或る程度対応出来るのはディマンド・プル型(需要牽引型)のインフレだけで、コスト・プッシュ型(原料高騰型)のインフレや資産バブルの発生には無力であろうと思われる。

 しかも、厄介なことに、これらの問題に対しては、裁量的な財政・金融政策でも対応は困難なのだ。

 必要なのは、一見退屈な、税制や財政支出の「ちまちました」検討であって、新興の経済学説を輸入しようがしまいが、それは変わらない。必要な道具は、国内の言論空間に、既に充分に存在していると思う。