「税収で返済しなければならない」という表現について

 仮に、国債市場が確立されていなかったり、確立されてはいても小規模で未熟であれば、この表現は正しい。どこの国でも、国債という制度を導入し始めた頃は、まずは税収によって元本を保障することで信頼を保とうとするに決まっているからだ。
 但し、大規模で安定した国債市場が一旦確立すると、様相は大きく異なってくる。元本に相当する部分は他の市場参加者の購入によって賄われるため、発行元の政府は、利払い費を確実に支払うことにだけ留意すれば良い、という状況が出現するのだ。つまり、この段階に至ると、市場がよほど不安定化しない限り、元本を税収で返済する必要はなくなる。
 一部の新聞報道で使われた「税収で返済しなければならない」という表現は、少なくとも、現在の日本では誤りである。しかし、それは、常識に照らし合わせて誤りなのであって、海外から密輸入された経済学説(モドキ)が提示する「真理」から外れているから誤りなのではない。