通貨は納税によって破壊されない

 以下の引用に示されているように、通貨は納税によって、金融市場から一時的に外に出るだけで、決して破壊されるわけではない。また、外に出ていた通貨は、公共事業代金の支払いによって金融市場に戻されるのであって、政府が無から創造しているわけではない。

 国庫に引き揚げられた分をカウントから外すのは、おそらく、金融市場の締まり具合や緩み具合をリアルタイムで把握する必要があるためだろう。

 金融情勢を安定させるのは、中央銀行にとって、重要な仕事である。大きな変化があった場合、いち早くそれを察知し、すみやかにそれを相殺するような行動がとられなければならない。

 国庫に引き揚げられてから実際に支出されるまで傍観していたのでは、変動が大きくなり過ぎて職責が果たせないのではあるまいか?



 「企業甲にとって、“企業乙への鋼材購入代金の支払い”と“法人税納入”とは、手元流動性流出という点でいささかも異なるところはないが、マクロ金融の観点から見ると、両者は大いに事情が違う。鋼材代金支払いは、民間人甲から乙への預金通貨振替が行われるだけで、振替決済後も経済全体のMS総量は不変、甲・乙の取引銀行が異なる場合に個別銀行間の資金移動が生ずるのみである。これに対し、納税の場合には、当該金額だけのMSとbMが金融市場から流出して政府に吸い上げられてしまう。すなわち、税揚げは、広義金融(MS)市場、狭義金融(bM)市場ともタイトになることを意味しているのである。逆に公共事業代金支払いが、bM市場、MS市場双方を緩ませることになるのは言うまでもない。」(2015・横山昭雄『真説 経済・金融の仕組みー最近の政策論議、ここがオカシイ』・日本評論社)