イベルメクチン 葬送

 確かに、いくつかの小規模な介入研究で良好な結果が得られたことはある。しかし、それらは、かなりの数の国民が今でも寄生虫の被害を受けているような国で実施されたものに限られる(※1)。これをイベルメクチンのCOVID-19に対する効果と解釈してしまうのは、統計的因果推論の能力に難があると自白しているに等しい。

 研究モデルがRCT(※2)だからといって、盲信は禁物である。リアルタイムでこのような一連の研究および解釈の事例を目にすることができたのは僥倖であった。

 当然のことながら、最近の調査結果は「有意差ナシ」ばかりである。これも、そのひとつ。

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Effect of ivermectin vs placebo on time to sustained recovery in outpatients with mild to moderate COVID-19: A randomized clinical trial. JAMA 328:1595-1603, 2022  https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/2797483 

※1 バイアスを排除するためのモデルであるRCTだが、この場合は、寄生虫被害者の有無という交絡要因を排除できていなかったわけだ。

※2 randomized controlled trial の略称。無作為化比較対照試験などと訳される。因みに、昔は「無作為比較試験」などと、意図的に無作為「化」したことがわかりにくい訳語が使われていて、困ったモンだと思っていたのだが、いつの頃からか改善されていたようだ。