ビタミンD仮説(?)終了のお知らせ

 事前にバイオバンクに登録・保管されていた血液サンプルを用いたUKの研究。グラスゴー大学の研究者によるもの。


https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1871402120301156?via%3Dihub


 表面上はビタミンDと関連があるように見えるが、交絡要因を補正すると違いは見出せなくなる。その代わり大きな要因として浮上してきたのが「人種」である(黒人≫南アジア系≫白人)。

 その他、「健康状態」(元々体調の悪い人が罹患しやすい)、BMI」(極端な肥満)、「生活水準」(ここでは収入ではなく、Townsend deprivationを用いている)

などもリスク要因になっている可能性があるが、人種の差に比べると、その影響はかなり小さい。正直なところ、「生活水準」の影響が一番大きいと予想していたので、これは意外だった。

 要するに、黒人同士あるいは白人同士のグループ内では、血液中のビタミンD濃度が高かろうと低かろうと、罹患率に違いは無いということだ。

 その他に考えられる要因としては、居住形態(単身者・核家族・三世代同居・複数世帯同居)などだろうが、これについては分析されていないので、何とも言えない。

 なお、一部の報道で(恐らくガーディアン紙)言語の壁によって医療機関へのアクセスが阻まれているからBAME(black and minority ethnic)の感染者が多いのだ、と声高に主張されているが、そもそもこのバイオバンクに登録されている人は英語が話せる人ばかりなので、それが主因であるとは言えない、として、論文中の考察でこの見方を退けている。

 生得的な違いから目をそらして、まず「社会問題」を煽るためのネタにしようと待ち構えている報道関係者というのは、どこの国にもいるらしい。多分、この論文は、(国を問わず)大きなメディアでは取りあげられないんだろうなあ。