こら~げん

 信じられないかもしれないが、ほんの十数年前までは、「コラーゲンを摂ってお肌プルプル」などというマヌケな宣伝文句が大手メディアに堂々と掲載されていたものだ。大半は、女性をターゲットとした健康食品の類だったと記憶している。確かに人体にはコラーゲンが多く用いられていて、重要な成分であることに間違いはないのだが、ここでは、むしろゼリーやババロアのプルプル感を連想させることを狙っていたのだろう。悪い意味で非常に優秀な宣伝文句であった。

 そうしたタチの悪い宣伝文句が激減した理由(の一つ)に、生化学の知識を持つ専門家が、煩を厭わず「啓蒙的」な文章を公の場に提出してくれたことがある。最も単純かつ効果的な指摘が「コラーゲンの分子量は大きいので、そのまま吸収される訳がない」というもので、これに、「良質なたんぱく質を摂っていれば、わざわざコラーゲンなど摂らなくても、必要な分は体がきちんと合成する」という説明が加わる。

 この指摘が意外と効果的だったことは、その後、メーカーが成分表にコラーゲンではなくコラーゲンペプチドと記載するようになったことでわかる。コラーゲンペプチドならば分子量が小さいので、腸管から直接吸収される可能性は高い。せめて「そのまま吸収される訳がない」という批判だけは躱しておきたかったのだろう。

 ところが近年、専門家達の中から、コラーゲン摂取にも意味があるのではないか、という意見が出ているらしい。

 曰く、、、コラーゲンの消化・吸収プロセスにおいて特定の物質の血中濃度が高まり、人体がこれを体内のコラーゲンが分解・減少したシグナルと誤認することによって再合成の動きを強めるのだ、、、と。

https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2017/PA03244_04

 確かにそのようなメカニズムはあり得そうである。ただし、これはあくまで「仮説」だ。実際にヒトを対象とした臨床試験で効果が確認されたわけではない。

 しかし、奇妙なことに、この仮説と矛盾しない結果が出た例として、

① ゼラチンやコラーゲン加水分解

② 多糖類(デキストリン等)

の二者を比較した、小規模なRCTが紹介されることがある。

 おかしいと思わないのだろうか?

 これが、

① ゼラチンやコラーゲン加水分解

③ 乳清たんぱく

の二者を比較した上で①の方が「量的」「速度的」に有意に良好な結果が出たというのならわかる。その場合は、単にたんぱく質を摂取するのとは別のメカニズムが働いている可能性がある、と想定するのが自然だろう。

 だが、ゼラチン(たんぱく質です)とデキストリン(糖質です)を比較した「研究」は、一体、何を「証明」しようとしているのだろうか?