全粒穀物のメリットは、玄米では確認されていない①

 精製穀物より全粒穀物の方が望ましい、というのは、世界中の栄養学者のコンセンサスであるらしい。但し、この見解は「欧米」における「観察研究」のデータに基づいたものである。対象になっているのは、小麦やライ麦のパンであったり、デュラム・セモリナやスペルトのパスタであったりするが、決して玄米ではない、という点に注意が必要だ。

 ひと頃、玄米の方が良いのは科学的に証明されていると主張する著作が話題になったが、その根拠は薄弱である。著者は米国在住の日本人医師らしいのだが、医師であり、エビデンス・レベルについて学んだ形跡もあるのに、栄養学や栄養疫学については随分杜撰な主張をするものだと呆れさせられたものだ。

 現時点では、データ不足で、はっきりした結論を出す段階には至っていない、というのが実情であろう(⇩)。

お米にまつわる疫学の一端(今村文昭)

https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2018/PA03275_05

「では,一般にも関心を集めている精製度の低いお米は良いのでしょうか。玄米の摂取と疾患リスクに関する観察研究はハーバード大学による医療従事者を対象とした研究のみです。糖尿病と負の関係はあるものの(Arch Intern Med. 2010[PMID:20548009]),心疾患,脳卒中やがんとは有意な関係は認められていません(例:Am J Clin Nutr. 2015[PMID:25527760])。また,健康意識の高さや他の穀物の摂取などの交絡因子も除去しきれません。そうした課題を鑑み,同大学は白米と玄米とを比較する16週間の介入研究を中国で行いました(n=202)(J Nutr. 2011[PMID:21795429])。主要アウトカムを空腹時血糖値とし体重などを検証したものの,有意な結果は白米のほうがLDLコレステロールをより下げるという予想外のもののみでした。他の小規模な研究を含めても,玄米が疾患リスクを下げるエビデンスは未成熟といえます。」

(⇧)ここで、交絡要因として、サラリと「健康意識の高さ」に触れているのは流石である。健康意識の高い人ならば、空腹時血糖やヘモグロビンa1cの値が高まってきた時点で自発的に摂生を始めるだろうから、糖尿病との負の相関も、玄米のおかげとはいえないことになる。

 そもそも、米食文化圏でもないアメリカでわざわざ米を選び、しかも白米ではなく玄米を食べる人とはどのような人であろうか?

 それに、対象が医療従事者である時点で、かなり選択バイアスのかかったサンプル集団であるような気がするのだが、、、